11人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かその子はみらくる村にお嫁に行ったそうよ」
「え、そうなの? それならあたし達も知っている人かしら?」
けれどそれらしき相手と母が会っているところは見たことがありません。チェリィが不思議に思っているとブラウンさんは更に続けました。
「旦那さんとは何年も前に別れちゃったらしいから、もうみらくる村にはいないかも知れないわね。相手は宿屋の息子さんだったそうなんだけど」
突然がしゃんという音がしました。
どうやらレインが紅茶のカップを落としてしまったようなのですが、動揺しているのか彼の顔からは血の気が引いておりました。
「まぁレインさん、どうなさったの?」
顔を青くするレインの横へエリンカは慌ててすっ飛んでいきます。
彼がなにに動揺しているのかをチェリィはすぐに勘付きました。
みらくる村に宿屋は一軒しかなく、そこの奥さんが旦那さんと壮絶な夫婦喧嘩の末に出て行ってしまったという話を何度か聞いたことがあったのです。
「ねぇ、そういえばレインのお母さんって」
そこまで言いかけてチェリィは押し黙りました。
レインの顔色は可哀相なくらい悪く、これ以上言及したらぶっ倒れてしまうのではないかと本気で思ったのです。
不思議がるブラウンさんにあらましを説明したら、このつながりにちょっと驚いた様子でした。
チェリィとしても自分達の母親がそんな仲だったということが意外でなりません。
「あらレインさん、どうかなさったの?」
そこへアミンカがやってきてかなり冷めた口調で声を掛けてきましたが、レインは返事なんぞしていられません。
アミンカと一緒にやってきたリューインは、レインが真っ青になっていることにすら気付かずに言いました。
最初のコメントを投稿しよう!