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それからほどなくしてクッキーを焼き終わったので、ブラウンさんや双子も連れたってチェリィは神殿へとやってきました。
前にも一度入ったことがあるのですが、ゆっくりと中を見るのはこれが初めてのことです。
巫女は毎日決まった時間に広間で祈りを捧げる決まりとなっており、街の住民も彼女と共に国の守り神であるドラゴンへ祈ることができるのです。
元々神殿への参拝者は多かったのですが、ここ最近になってその人数はずいぶん増えたそうです。
祈りの時間までは少し余裕があるので、それまでは適当にその辺を見学して待つことにしました。
神殿にはたくさんの絵が飾られている部屋があり、歴代巫女の肖像画が飾られておりました。
何気なくそれらを眺めながら歩いていたら、その中の一つに自分によく似た少女の物を発見してチェリィは思わず足を止めました。
まだ十五、六歳の可愛らしい少女の絵です。チェリィとそっくりな顔立ちですが、チェリィよりも落ち着いていそうで、はかなげな印象がありました。
「ああ、これはエイミー様の肖像画よ」
とても懐かしそうにブラウンさんは目を細めます。
少女時代のエイミーの肖像画を見上げ、レインが一言もらしました。
「昔の師匠って可愛かったんだな」
そしてちらりとチェリィを見てがっかりとした顔をしました。
なんのコメントもなくただただ落胆の眼差しを注がれて、なんとも腹立たしい気持ちにさせられます。
「なによ、あたしだってあと何年かしたらこうなるわよ!」
けれどそこでチェリィはふとあることに気付きました。母の肖像画の横に、どこかで見たことのあるような少女の物がありました。
黒髪で、ツンとしていそうな雰囲気の美しい少女です。
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