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そんなこんなで過去の出来事に思いを馳せていた一行ですが、このやり取りは思わぬ形で破られることになりました。
「助けてください!」
悲痛な声と共に茂みの中から人が飛び出してきました。
質の良さそうな青い法衣をまとった若い女性です。神官と思しきファッションのその人は、大きく膨らんだ袋を抱いていました。
法衣はあちこちが擦り切れてぼろぼろで、この女性もかなり疲労しているようです。三人が慌てて女性に駆け寄ると息も絶え絶えに彼女は言いました。
「お、お願いします、助け」
がくりと女性はその場に蹲ってしまいました。
「ちょっと、しっかりして!」
「こ、これを」
かすれた声。チェリィは耳をそばだてます。
「これを、エイミー様に」
「えっ?」
女性はそのまま気絶してしまいました。
「どういうことなのかしら?」
チェリィは困惑しました。
今確かにこの女性はエイミーの名を、チェリィの母の名を呼んだのです。
ひどいケガはしていないようですが女性は固く目を閉じています。ともかく彼女を村の病院へ運ぶのが先決でしょう。
「この人、お母さんになにを渡すつもりだったんだろう?」
気になったので勝手に袋を開けてみると、出てきたのは綺麗な色をした卵でした。スイカくらいの大きさはあるでしょうか。こんな大きな卵を見るのは初めてです。
「なんの卵かしら?」
そこでがさがさと茂みをかき分ける音が聞こえてきました。
ほどなくして近くの草むらから現れた人達の姿を見て、チェリィ達は戦慄します。
「やっと見つけたぞ」
登場してきたのは赤いローブを身にまとったいかにも怪しい人達です。
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