6 ある少年が見た光景

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「どうしたもんか、息子がいないんじゃまたボコボコにされてしまう。あの馬鹿は父さんになんの恨みがあってこんなタイミングで行方をくらますんだ!」  実際にそれなりの恨みはあるのでしょうが、別にそれだけの理由でよその国へ行ったわけではありません。ともかくこうなってしまったものは仕方がないので、早くシェルターを作らなくてはと一人でわめいていました。  ところでその宿屋の元奥さんことレインの母とエイミーは幼い頃からの友人だったのですが、彼女はどうやら自分の家族だけでなくエイミーにも用があって村を訪ねてくるそうなのです。  友人の訪問を楽しみに思う反面、エイミーには気掛かりなことがありました。  先日、森の中で保護された一人の女性。  エイミーは彼女の服装に見覚えがありました。あれはドラゴンの神殿に務めている者が着用する物です。  彼女は意識も戻らず、村の病院でうわ言のように「たまご、たまご」と繰り返しているのです。  チェリィが今いるのもエイミー達の出身地であるドラゴンの国であり、手紙によるとチェリィはそのドラゴンの卵を巡ったごたごたに巻き込まれているとのことです。  エイミーは、なにか悪い予感を覚えるのでした。
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