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ここ最近、チェリィにはあまり元気がありませんでした。
いつもだったらお店のお手伝いをしたりお使いに行ったりするのですが、どうしてもそんなことをする気分にはなれなくて部屋でぼんやりと過ごしてしまいます。
「チェリィどうかしたの?」
彼女のことを気掛かりに思ったジミーが部屋に様子を見に来てくれました。
「なんでもないもん」
ベッドの上にちょこんと腰掛けながらチェリィは俯きました。誰がどう見てもなにかを思い悩んでいる様子です。
神殿であのシルヴィアという少女の姿を見た時にチェリィはものすごく怖いと感じたのですが、他の皆は特に変わった様子はないと言っており、チェリィ一人だけが言い知れぬ恐怖に悩まされているのでした。
「あの女の子のことで悩んでいるの?」
「なんでわかるのよー」
「そりゃわかるよ。でも、なんでチェリィだけがあの子を怖く感じるんだろうね」
「見当もつかないわよ!」
拗ねてベッドの上で体育座りをするチェリィの隣に腰掛けてジミーも考えました。
「そう言えばあの後のことなんだけどね」
ジミーはふとあることを思い出して言いました。
あの一件でチェリィとジミーの二人だけが先に戻ったのですが、そのすぐ後に一悶着があったそうです。
シルヴィアが祈りを終えた後に人々は一列に並んで彼女の前に歩み出ました。ドラゴンの祟りで不安を感じている民の為に、巫女が一人一人に祝福の光を浴びせてくれるのです。
一人に掛かる時間は数分ほどですが、後ろの方で並んでいる人はそれなりの時間を待たなければならないのです。双子やブラウンさんはこれまで巫女の祝福を受けたことがありませんでしたが、面白がったリューインが有名人の握手会のノリで列に並んでいきました。
そんなこんなでいざリューインの番になった時、それは起こりました。
「あなたに祝福を」
淡々とした調子でシルヴィアがそう言い、祝福の光を浴びせる為にリューインへ向かって手をかざそうとしたその時でした。
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