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彼女はリューインの顔を見た途端にさっと顔色を変えると、目を大きく見開いて金切り声を上げたのです。
それが恐怖によってなのか憎悪によってなのかはわかりませんでしたが、顔を真っ青にしたシルヴィアは髪を振り乱しながら叫び、体をガタガタ震わせてリューインを指差しました。
「お前は何者なの!」
「なにがっ?」
「やめて、それ以上近付かないで!」
その場にいた人々は突然の事態にざわめき、大慌てで神官さん達がすっとんできました。後退りしながら巫女はなおも叫び続けます。
「この男を早く追い出して!」
「え、えぇ? 待ってくれ、俺はなにも」
なにがなんだかわからずおろおろしている間にリューインは取り押さえられてしまい、遠目でそれを見守っていたブラウンさんや双子は彼のことを心配し、レインは他人のふりをしました。
「ってことがあったんだって」
「リューインが?」
なんだかおかしな話です。
彼自身は特に変なことをしたわけでもないそうなのに、一体全体どうしてしまったというのか。
例えばチェリィがシルヴィアのことを苦手だと思うのと同じように、シルヴィアもリューインに対してなにか形容のし難い嫌悪感でも覚えたのでしょうか。
「俺の噂をしている気配を感じてやってきたぜ!」
ばーんと元気よく扉を開けてリューインが入ってきました。
「出てって」
「そう言わずにぃー!」
「なんか用?」
「なんかー近所の少年がドラゴンについての情報を持っているらしいんだよ」
「それは超重要なことね!」
「で、そいつは今店の方に来てるんだ。お前らも会ってみない?」
彼には先日の出来事について詳細を求めたいところでしたが、それよりもドラゴンの話の方が大事です。いつまでもうじうじしている訳にもいかないし、気分転換の為にもチェリィはその少年に会ってみることにしました。
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