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もめまくった末にもう一回分のおやつで許してもらいましたが、リューインはすでに虫の息でした。
「で、あなたはなにを見たの?」
「あのさ、僕はそこででっかいドラゴンを見たんだよ。他のドラゴンよりもでっかかったの。でもすごく苦しそうにしていたの」
「病気なの? それともどこか怪我をしていたとか」
「そんなのわかんないよ。けどね、ドラゴンは言ってたんだ」
彼はまた意味深な様子で紅茶を一口すすると、雰囲気を出す為か神妙な顔つきになり、両肘を立てて口元に組み合わせた両手を持っていきました。
「この国が呪われているって」
なんか物騒なことを言いだす少年の顔をチェリィ達はまじまじと見つめました。
「このままだと悪い魔法で国が死んじゃうんだって」
「国が死ぬって、そんなスケールが大きいことを本当に言ってたの?」
「うん、寝言で」
寝言かよと突っ込みたい気持ちを抑えて少年の話を最後の方まで聞くと、彼はその後どうやって元の場所へ戻ってきたのかもよく覚えていなかったのですが、あのドラゴンのことが気になって次の日も同じ場所に行ってみたそうです。
けれどどれだけ探してもあの花畑はどこにもなく、ドラゴン達の暮らしていた谷へは辿り着けなかったそうです。
普通なら、この鼻たれ少年が夢を見ていたのだろうと言う考えに落ち着くはずです。けれどチェリィはなぜかそう決めつけてはいけない気がしていました。
なにかこう、背筋がぞうっとしてくるような感覚を覚えたのです。
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