6 ある少年が見た光景

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 ところでその日の夕方のこと。  ブラウンさんに頼まれて遠くまでお使いに行っていたレインとエリンカがのんびりとした様子でお店までの帰り道を歩いていました。 「すっかり遅くなってしまいましたわね」 「ああ、寄り道したからな」  お菓子の紙袋を漁りながらレインは答えました。  用事を済ませてさあ帰ろうというタイミングで小腹が空いてしまった二人は近くにあった喫茶店へ立ち寄って長々とそこで過ごし、その後の帰り道ではお菓子屋さんに立ち寄ってダラダラ買い物していた為に、予定よりも帰るのが遅くなってしまったのです。  皆が心配するといけないので近道を通ろうと思って二人は路地に入りましたが、それからちょっと進んでいくと道をふさぐようにして横たわっている人を見つけました。  それは例の赤いローブを着た人で、レインとエリンカは不思議そうに相手を見下ろしました。  ローブの人は空になった酒瓶を鷲掴みにして気持ちよさそうに眠っています。こんな時間からこんな場所で酔って眠りこけているとはなんて迷惑なのでしょうか。  仕方ないので相手を跨いで先に進むことにしたのですが、その時レインの足がぶつかってローブの人の袖の辺りから一冊の手帳が落っこちました。  どうせ下らないポエム日記でも書いてあるんだろうなと思いつつも、なにげなく拾い上げたそれにレインは視線を落としました。 「!」  そこにびっしりと書き込まれていた言葉をレインは凝視しました。いつになく真剣な様子な彼をエリンカは不審に思いました。 「どうなさったの?」  声を掛けられてレインは我に返ると、ばたんとそれを閉じて自分のポケットにねじ込んでしまいました。 「あの、レインさん?」 「シッ」  レインはローブの人が起きないか警戒しています。エリンカは小声になって彼に言いました。 「レインさん、他の方の持ち物を勝手に持っていくなんて」 「書いてあった」 「え?」 「重要なこと。あのさ」  レインはこっそりとエリンカに耳打ちしました。  顔色を変えてエリンカは再びローブの人を見下ろし、それから二人はあれこれ相談をし出しました。
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