2.

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でも、まさか、早速連絡するような事態が起こるとは、思ってもみなかった桜田である。 試験監督のバイトが終わって、桔平を含む数人でボウリングでも行こうということになった。 みんなでワイワイ歩いているところに、その車が寄ってきたのだ。 黒塗りの高級車。 最後尾を歩いていた桜田と桔平の横にスッと止まる。 桔平は、1ヶ月前にも似たようなシチュエーションで拉致されたことがある。 明らかに警戒して桜田と顔を見合わせた。 桜田も、小さく頷いてポケットのスマホを握りしめる。 すぐに連絡できるように。 車の窓がスルスルと開いた。 「そう警戒しなくてもいい」 中に乗っていた白髪のやたら威圧感のある男性が、値踏みするように鋭い視線を桔平に這わせた。 「君が堀越桔平だな」 桔平を庇うように前に立つ桜田には目もくれない。 「遊佐先生に連絡しても構わん、少し私と食事に付き合ってくれんか」 人に命令することに慣れている有無を言わせない声だ。 桔平は、しかし、少しムッとして言い返した。 「俺は名乗らない人と食事をするつもりはありません」 そもそも、友人と約束があるので。 黒塗りの車に拉致されて怖い思いをしたのはまだ記憶に新しい。 いきなり車に連れ込むような真似をされなかったからといって、おとなしくついていく理由にはならない。 白髪の男は、ふむ、と頷いた。 「多少は警戒心を持っているか…そうでなくては困るがな」 だが、と続ける。 「遊佐先生にいくら頼んでも会わせて貰えないとなったら、少々強引な手を使っても仕方あるまい」 そんなに心配ならそっちの彼も一緒でいいから、と桜田のほうを顎でしゃくった。 そういう問題じゃなくて自分たちはこれから予定があるのだ、と桔平が頑なに断ろうとしたそのとき。 「堀越君」 新たな声が、彼の名を呼んだ。
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