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厄介なことになった。 電話を置いた川嶋は、彼にしては珍しく眉間に皺を寄せていた。 いつも変わらないはずの表情が少し崩れている。 今しがた通話が終わった電話の相手は、遊佐の恋人の友人からだ。 堀越桔平に何かあったら連絡して欲しい、と上手く丸めこんで…いや、頼んである。 古くからの顧客である翁川がしばらく前から遊佐の恋人に興味を持っているのは知っていた。 実際川嶋にも、遊佐本人にも、会わせて欲しいと言ってきたことが何度かある。 が、遊佐は全く取り合わなかった。 仕事とプライベートは分けていますので、と、にべもなく。 諦めてくれるはずはないと思っていたが、まさか断りもなく直接会いに行くとは。 今遊佐が一番嫌うことをやってくれた。 翁川は今の日本の政界を掌握しているフィクサー的存在だ。 さすがの遊佐も、喧嘩を売ればただでは済まない。 だが、遊佐は溺愛する恋人にちょっかいかける相手を許さないはずだ。 川嶋は、知らずため息を漏らした。
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