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桔平の細い腰を抱いて、助手席のドアを開ける。 クリスマスのときに花束への反応は普通だったので、今日はやめておいた。 実はそのとき、遊佐はすごく反省したのだ。 桔平を女性扱いしてしまった上に、それまで付き合っていた彼女たちのテンプレートに嵌めてしまった。 普通に考えて、成人男子は花束なんて喜ばない。 そのかわりに、シートの上には小さな包みが乗っている。 上品な黒い包装紙に包まれたそれを見て、桔平が遊佐を見上げた。 置いてあるそれが自分へのプレゼントだとすぐに思わないところがまた謙虚で可愛い。 「バレンタインだからな、君に私からの愛の告白だ」 甘い声で囁くと、桔平は更に顔を赤くした。 どうせまた台詞がオジサン臭いと思っているんだろう。 「あの…ありがとうございます」 大切そうにそっとその包みを手に取って、桔平は少し躊躇うように遊佐を見た。 「俺からもあるんですけど」 その一言で、すぐに頭に甦った記憶。 クリスマスのときの桔平のプレゼントは破壊力抜群すぎた。 思わず遊佐は、桔平から瞳を反らしてコホンと小さく咳払いをした。 そんな彼に桔平も同じことを思い出したのか、何考えてるんですか!違いますよ!とこれ以上ないほど赤くなって小さく叫ぶ。 「何が何と違うんだ?」 そんなところも堪らなく可愛いから、ついつい意地悪したくなり、遊佐は尋ねる。 桔平はジロッと遊佐を睨み、質問は無視して、ダウンジャケットのポケットからごそごそと何かを取り出した。 「遊佐さんはなんでも持ってるから、何あげたら喜ぶかすごい悩んだんですけど」 封筒のような薄い包みだ。 何が入っているのか全く予想がつかない。 でも、彼の愛しい恋人が一生懸命考えてくれたものだ。 嬉しくないわけがない。 「ありがとう」 包みを受け取って、上着の内ポケットに大事にしまう。 「帰ったら開け合おうか」 2月の深夜はとにかく冷える。 桔平に暖かい車内に乗るよう促して、遊佐はドアを閉めた。
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