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バレンタインのプレゼントはもちろんそれで終わりではない。 マンションについて、部屋のドアを開ける。 甘い匂いが漂っていた。 桔平が、その匂いにワクワクしているのがわかって、遊佐は微笑む。 リビングに灯りを点けると、無駄に広い部屋のど真ん中に、窓の外に広がる東京の夜景を背景にして、巨大なチョコレートの噴水がそびえ立っていた。 「わ!」 嬉しそうに叫んだ桔平が、その噴水に子犬みたいに走り寄った。 「すげー!チョコレートフォンデュ!!」 てか、大き過ぎだろーっと言いながら、めちゃくちゃはしゃいでいる。 指をそっとその滝に突っ込んで、ぺろっと舐めた。 「ウマッ」 「どれ」 遊佐は背後から桔平の手を掴み、舐めきれなかったチョコレートが残っているその指をパクリと口に入れた。 「ゆ、遊佐さんっ」 慌てて手を引こうとする桔平の動きを、遊佐がもちろん許すはずがない。 上顎と舌を使って包み込むように扱くように往復して、チョコレートを舐めとる。 チラリと視線を流せば、桔平の顔からふわりと色香がたちのぼった。 指を舐められて、感じてくれている。 遊佐は、桔平の指をもう一度チョコレートの滝に突っ込んだ。 トロリとまとわりつきながら滴り落ちるチョコレートを、再び指ごと口に含む。 指の皺、爪の間、どんな隙間にもチョコレートを残さないぐらいの丁寧さと執拗さで舐め回す。 「んっ……ゆさ、さ…ん……」 ふるっと桔平の背中が震えた。 「チョコレートで汚れるといけないから脱がせるぞ」 この可愛くて可愛くて仕方ない恋人を喜ばせるために用意したチョコレートフォンデュだったが。 思いがけず、遊佐のほうが楽しむことになりそうだった。
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