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遊佐が嬉しそうに微笑んでいる。 「本来なら実家に挨拶に行く前にこうするべきだったんだが」 そう言いながら立ち上がり、桔平の隣に腰かけた。 箱の中には飾り気のないシンプルなプラチナのリング。 「君の指のサイズで作ってあるが、指にはめるのはいろいろ面倒だろうから」 指輪を箱から引っ張り出すと、一緒に細いチェーンが出てきた。リングはそのチェーンに通してある。 「首にかけるほうが目立たない」 チェーンの留め具を器用に片手で外し、遊佐は桔平の首にそのチェーンを巻き付けた。 留め具を留めた首筋に、そっと唇を押し当てる。 「私の桔平だ」 桔平は、なんだか急に泣きたいようなムズムズとしたせつない気持ちになって、首を捻った。 自分の首筋に顔を埋めている遊佐の頭に、お返しとばかりに唇を当てる。 「……俺の遊佐さん、です」 遊佐が顔を上げる。 その首に、同じチェーンがかかっていることに、今更桔平は気づいた。 お揃いのチェーンには、たぶんもちろんお揃いの指輪がぶら下がっているはずで。 嬉しいときにも涙が出ることがあるのは知っていたけれど。 嬉しくて、こんなに胸が詰まるような、せつない涙をこぼすのは初めてかもしれない。 遊佐がそっと涙を唇で拭ってくれた。 それから、優しい優しいキスをした。 今までで一番長いキスだった。 きっとそれは、何か神聖な誓いのそれだ。
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