第一章

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そう云えば社長の花を生かす造形にはセンスがあった。 「そしたら何で弟子を取って流派の名を挙げはらへんかったんやろ」 「さあそれは本人に訊かなあ判らんが実のない名取りよりこっちの方が性におおてるやろう」 社長の性格からしたらそれは一理あった。 「話し逸れたけど亡くなったいろはの会長ってどんな人です?」 「一言で云うたら倹約家や、世間ではケチとかがめつい男やとか知らん奴は言いふらしているがあの人はそやない、今度の葬儀でもそれを実践したはる。要するに無駄な所には金を使わん今度も内輪で密かに野辺送りをしたらええっちゅう事やったがさすがに世間体が悪い、それだけは折れたようやなぁ」 「何か見て来たような話ですね」 「アホ、今朝亡くなったんやでまして赤の他人や、知る訳ないやろうそれぐらいの事はやりそうだったちゅう話や」 「白井さんはそんな情報どこで手に入れるンです」 「わしは元は庭師や、定期的に昔は良家の庭を手入れさせてもらってたからなぁその辺の裏の話はなんぼでも入って来るし家の人も長い付き合いで本音を言わはる。まあ庭もそれにおおたようにさしてもらってた」 「そんな大家ばかりの庭をいじってた人がなんでまた内の花屋さんに来やはったんですか」     
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