第一章

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深夜に亡くなられた会長の遺体は病院から自宅搬送されて午後にホールへ運ばれて納棺される。その頃には親族が集まり始めるから今日までの注文分は全て祭壇とその周りに飾り終えねばならなかった。最悪通夜式の一時間前には飾り終えねば参拝の列席者から苦情が来る。鹿能と白井は供物、供生花の設営を始めていた。これからどれだけ注文が来るか分からないからそれを見越してやり出した。  祭壇前が一杯になれば会場の側面にも花を飾っていかねばならない。その花を店ではおおわらはで作っていた。鹿能の今日の仕事は生花の搬送と取り付けだった。花には供花された人の名前も取り付けてゆくから入り口の当家の名前も目に入らなかった。搬入した生花の中に”喫茶敷香”と書かれた供花を見つけて、これは昨日の人だと思って目立つ祭壇前に持って行った。すぐに白井に呼び止められた。 「おいおい、鹿能、何してんにゃ昨日今日入った社員じゃあるまいに祭壇の前は故人と近い関係のもんやそこに五万の生花はないやろうそこはほとんど十万の生花を飾る場所やで」 「ハア、そうですがホールからの手配書では故人の傍にとなってますけど多分この生花は近所のお店じゃないですか」 「そんなもんが何でそこに来るんや、祭壇前は大事な会社関係のしかもお得意さんを置かなぁクレーム来るぞ、それにお前その店に行ったことあるんか」 「行くどころか場所も知りません」 「そしたらなおさらや後で立花はんが困る事はすなよ」     
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