第一章

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 ーーそこは幌内川の河口で切り出した材木を流送して集積するところでした。でもその半年後には攻め込んできたソ連によって樺太を脱出しました。その時に預かった亡命ロシア人の資産を元手にして今日の財を築いたそうです。 「そのロシア人はどうしたのですか」 「数年後に樺太から引き上げて来た漁場仲間から亡くなったと知らされたらしいの」 「どれ位の元手か分かりませんがとにかくおじいさんは一代で今のいろは商事を作られたんですね。すごい立身出世されたのですね」 鹿能が ホールに入ると入り口には確かに波多野家通夜・告別式と描かれいた。これを全く見落とすなんてどうかしいる。葬儀会場に戻ると姉たちが彼女らの夫ともに棺の後ろに華やかに飾られた祭壇の供物と供生花に見とれていた。   「奈美どこへ行ってたの」  奈美は振り向いた姉たちの傍まで鹿能を連れて行った。 「今日の飾り付けはこの花屋さんがされたのよ」   鹿能は花屋の上着を羽織ってるから奈美と一緒でも姉達には奇異には映らない。だから見知らぬ男でも。 「あらそう」  と気軽に対応した。 「上の姉と旦那さんです」 姉達は生花に見惚れたままの視線を彼に送った。鹿能はまるで自分がこの祭壇の飾り付けを取り仕切った様に見られて困惑した。 「この生花はまるで天国の花園のような飾り付けで、おじいちゃんも満足じゃないかしら本当にありがたいわ」  姉達は鹿能に称賛を贈った。     
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