第一章

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「普通の葬儀ホールって云うから不安だったけれどこれは多くの弔意に応えられそうですね」 長女の夫が言った。 「お姉さんの旦那さんは婿養子でおじいちゃんのお気に入りで将来は内の会社の社長候補、今は専務候補」  奈美は長女の旦那さんを少し皮肉っぽく紹介をした。 「奈美さん部外者に余計な事は言わないでください」 それでも彼は辺りに目配せしながら言った。 「まだ家の家族以外は来てないでしょうけれど、せっかく紹介してあげたのにその物言いは失礼でしょう」 「何でこの花屋の肩を持つんですか!」  夫の波多野はムッとした様に奈美に噛み付いた。 「別にそんな事ありませんこれだけ立派な祭壇を作っていただいたのですから当然でしょう」  奈美は整然と言って退けた。 「そうねあたしもこの生花気に入ってるのよ、ねえあなた内の事務所にも置かない?」  次女が夫の山脇に相談した。 「それはいいわね山脇さんそうして」奈美が催促した。 次女の夫は笑いながらも了解した。 「淳子姉さんも生け花教室の材料に頼んだら」 「奈美、あなたいつから花屋さんの御用聞きになったの」 「そんな事無いわよねぇ賢治さん」 「どうやら私が一言多かったようですね淳子に変わってわたしからこの人に頼んどきましょう」  波多野は完全に奈美に負かされてしまった。     
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