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「お姉さんの旦那さん方から頼まれましたからね、こちらこそありがたい」
「その内にお店へ行って立花さんって云う人の腕の良い生花を拝見したいものね」
「それを言われると辛いところです」
しっかり修業しなさいと真美は笑って見送ってくれた。
「ばかもん十一月にキンモクセイが咲いている訳がないやろうそんな安請け合いしてどうするんや」
店で社長に依頼を受けた棺花に付いて報告すると怒鳴られた。
「でも今日はまだ十一月一日です、月が代わったばかりですよ」
恐る恐る鹿能は弁解した。
「立花はん、宇治の方で今頃咲いてる家が一件ありますわ、昔庭木の手入れをした家の生け垣に珍しいと思って見てたんです」
奥で作業をしていた白井が声を掛けた。
「白井はんそれはいつの話や」
「五年前ですわ」
「まだその生け垣は残ってるンか?」
「古民家ですから生け垣はありまっしゃろ、ただまだ咲いてかどうか、ちょっと電話で訊いてみましょ」
白井はそう言い残して奥へ消えた。
「恐るべき人ですね市内のあらゆる庭の情報をため込んでるなんて」
「アホかいな仙人じゃあるまいし、たまたま知ってだだけや。それにしてもお前、運がええなあこれで波多野家に謝らんでええがなあ」
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