第一章

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白井が戻って来て、咲いてるがだいぶ散って僅かしか残っていないと伝えた。 「鹿能すぐに宇治まで走れ、残ってるの何本か知らんが最低一尺以上の花の付いた枝を二、三本は貰って来い。他の草花と組み合わせてええ棺花(かんか)をわしが作ったるさかい」  鹿能は白井から場所を聞いた。 「二、三本でええんですか?」 「あれは香りがきついからそれでええんや、他の花が死んで仕舞うからなぁ、アッ待て! わしも一緒に行く」 白井から場所を聞いて出かける鹿能を立花も追った。 二人は軽トラで店を出た。 「何でまた付いてきゃはったんですか」 「いろは商事の会長の奥さんってどんな人やとおもてなぁ」 社長曰く棺花のイメージ作りの参考にしたいそうだった。 「社長珍しいですねいつも黙って生花を作らはる人が何でですか」 「あれだけの会社や粗略に出来ん。それに集まる著名な弔問客の度肝を抜く棺花を作ったろうと思ったら献花する人を知らなあかんやろう」 会長はある程度の資産を樺太から持ち出してそれと進駐軍に出入りしている奥さんと一緒になって今の会社を作ったと鹿能は簡単に説明した。 「それはどう云うこっちゃ」     
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