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「そこまで考えてるんですか」
「白井はんの話やとあそこの末娘と一日中ベッタリ付いていたそうやなあ」
「それは仕事ですからそう見えたんでしよう」
「白井はんは余計な事は云わん人やが千里眼やで、何せ庭の枝振りで家人の趣を察して仕舞う人やからなぁ、庭師は心意気やでぇ」
「ハアそんなもんでしょうか」
「わしは別にどうこう言わんが、気がおうて成り行き任せになったんなら誰も止められへんが錯覚ならその内まともなで目で見直されたら安もんのメッキなら直ぐに剥がれるぞ」
ばれない様にしろと云う警告なのか諦めと云う忠告なのか紛らわしい社長の言葉だった。
尋ねたキンモクセイの咲く家は白井さんとは十数年以上の付き合いらしい。腰を悪くしなければずっと庭の手入れをお願いしたのに残念だったと言っていた。日当たりが良いせいか生け垣のキンモクセイはまだ咲いていた。家人は出棺のおりにこんな強い香りがして大丈夫か心配した。
社長はそれを逆手に取って会長夫人のイメージアップを図るらしい。すでにこの花をワンポイントにした棺花を頭に描いているらしい。
「お前も控え室の座卓に置く花でも考えろ」
「社長、そんな注文は受けて無いんですが」
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