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「それぐらいのサービスをしておけ、二人の娘婿からも仕事受けたんやろ」
「それですが今回の喪主のお父さんは全てこっち任せで目立たん人でしたね」
「お父さん亡くならはって落ち込んでんのちゃうか」
「奈美さんの話だとそうでもないようですよ」
ウッと息を詰まらせながら社長は鹿能を注視した。
「お前どこまで深入りしてるんや。どうしょうかと思ったけどこの際言っとく、白井さんが偶然香典の受付場での話やが、その奈美さんを訪ねて来た若い男が居たそうや、受付の人もたいそうにもてなしていたらしい」
確かめ様がないから確信でなく推測に過ぎないがこれは初耳だった。彼女に訳ありの男が弔問に来た。それをなぜ黙っていたのか、彼女に何か思惑があるのかそれとも天真爛漫な人なのか・・・。
「どないしたんやまだハッキリした事やないでただの弔問客の一人に過ぎんかも知れん」
社長はやはり言うべきじゃなかったかとトーンを下げた。
「さっき白井さんは千里眼って言ったのは誰です、社長」
「人間万能やないで見間違いもある」
それよりは早う帰って棺花作りせなあかんと少し落ち込む鹿能に軽トラの運転を急かした。
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