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天王町にある立花花店から歩いて十分の所に鹿能の住むアパートがあった。
日曜は表の店は開いているが切り花や鉢植えの花ばかりだった。花を取り揃えて花束に加工する奧の工場は休みだった。
鹿能はカーテンの隙間から斜に差し込む朝日を浴びて目を覚ました。そのまま起きずにぼんやりまどろんでいると「ごめん下さい」とドアを叩く音に飛び起きた。休み日に一体誰だろうとドアの隙間越しに覗いて驚いた。小首を傾げて微笑む奈美さんが立っていた。彼は慌ててドアを開けた。
「店で聴いて来ましたけれどまだお休みだったんですか」
彼は片付け物で暫く待たしてからテーブル代わりのまだ布団のないコタツに招き入れた。
「これ一年中出してあるんですか」と彼女は笑っていた。
「兼用なんです、で今日はよく来られましたね」
彼は紅茶を淹れてから砂糖かミルクを聴いたがどちらも周りには無かった。テーブル代わりのコタツを見てそのまま一口飲んだ。
「やっと一段落したので先日のおじいちゃんの好評だった葬儀のお礼に花屋さんに来たらお休みって伺ったのでお店で此処を聞いて来ましたの」
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