第二章

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「それってぼくも恋の対象者なんですか」 「恋は余計ですけど十分にライバルにはなりますね」 奈美は人ごとみたいに至って簡単に述べる。 「まあそれは置いといて相手は誰ですか」  鹿能も至って冷静さを勤めるが内心は冷や汗ものだった。 「まあっ、無関心を装って。決闘でも申し込みますか」  奈美はあたしの為にそれだけの度胸をお持ちなのかしらと云う顔をした。その流し目に鹿能は参ってしまった。 「相手次第です」  鹿能はやけくそで言い切った。 「片瀬井津治と云うひと」 「通夜膳で隣に居た男ですか」 ウッと詰まらせた後に奈美は可怪(おか)しな顔をした。 「鹿能さんあなたお通夜には居ませんでしたよね」 「式後に注文の供生花を配達したんですその時ちょっと覗き見しました」 「余計な事をする人ですね」 「余計でしたか」 彼女はそれには答えない、いや無視した。 「片瀬のお母さんが祖父にとっては大切な人だったんです」 「会長夫人よりも」  無視された鹿能は愛の尊さを説く奈美に、愛よりも金の縁で繋がった夫人をわざと取り上げた。この子供ぽっさには呆れながらも威厳を保つためにも奈美は眉をしかめて見せた。     
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