第二章

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「話を飛ばさないで黙って真面目に聞きなさい、勿論祖母と一緒になってからの人でしたが」  ーー老いた会長は最近になって自分の寿命を悟った。その頃から息子達より末っ子の孫娘の私に昔の話をした。しかも付きっきりではなく断片的な物語に過ぎない。だから話が飛び飛びで「それは此の前聴いたわ」と云う具合に記者の聴き取りのようにある一定の緊張感を持って聴いたものでなく、極めて断片的なしかも一方的に気分の調子の良い時に孫の私を捕まえての話だった。記者の取材ではないから誇張があるかも知れなかった。何しろ話の真実性は本人以外は誰も解らない。だからこの話はこれからは推測で物事を進めるのでなく、もっと多くの祖父に関係した人々から聞き取りたい。そこであなたに協力してもらえればありがたいのですが。 「 その片瀬井津治と云う人からは協力は得られないのですか」 「得られるでしょう表向きは」 「と云いますと・・・」 「最近彼が良く解らなくなりました。元々寡黙な人だったんですけれど、誤解のない様に云っておきますが先の見える人ってつまらないと思いません?」 「先が見えない、だから常に未知との遭遇ですね」 「そう云えばあなたも解らない人ですね」     
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