第一章

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空いた間を詰める様に彼女は笑って言った。 「いや別にまともな事を言ってもらっただけですから」  「変なところで妥協しちゃあダメでしょう。それに他の事を気にしちゃだめよ、小さく纏まっちゃだめそれこそ世間から流れされますよ」  隙を見せるとどんどん突いて来る、一体この人は何しにこの庭を観賞しに来たのだろう。 「この庭とぼくへのお節介な干渉とどちらが今日の趣旨なんですか」 「そう言ってしまえば身も蓋もないでしょう。それともあたしのお説教お気に召しません? あたしと話しているのがお嫌いなんですか、それならそうとおっしゃればいつでも退散しますわよ」 「今更それはないでしょう」 「あなたはどっちなんですかハッキリおっしゃい」 彼女は時々喋り方が姐御調になるその変化が絶妙で頼もしい。どうやら隣の老夫婦も庭よりこっちの方が面白いのか時々耳を傾けている。 「なかなか粋なお嬢さんですね」  隣の夫婦が突然割り込んで来た。それで初めて彼女は女学生のような気恥ずかしい素振りを見せた。この子は幾つなんだと思わせた表情だった。が一瞬の虹のように消えた。 「急に割り込むなんて失礼な方! それにビックリしたわ」 一瞬受け身になった彼女だがその反撃の素早さに度肝を抜いた。     
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