第五章

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「さっきまで元気にしていた人が交通事故でバッタリ亡くなられたらショックでしょう、まあソ連の潜水艦と暴走族の違いは有りますが。由紀乃さんはそんな感じだったんじゃないですか、お母さんの美智代さんも交通事故かなんかで急に亡くなられたじゃないでしょうか」 「どうしてそう決めつけるの」 「重ね合わせるとそういう結論になります、と片瀬さんの最後の沈痛な面持ちが理解出来ます」 「おじいちゃんは美智代さんが具合悪い話など一言もなかったのにある日急に亡くなられたからそうかも知れないわね」 「何も訊いてないんですか」 「当時は子供だったあたし達に訊ける訳ないでしょうそれにあたし達からは遠い存在なのに葬式だってひっそりやったんですからね」 祖父は美智代さんを家族から遠ざけているふしがある。と思えば積極的に引き入れようとしたことも有った。その場その場の思いつきでもなく打算が底に働いてもいない。取り留めのない祖父の行動は、要するに美智代さんと云う人の魅力に取り憑かれてしまったからだ。 「行ってないなら分からないでしょうね」 「淳子姉さんは高校生だから知ってるかもしれないから電話するね」 「こんなところで」と鹿能は見回した。が一巡するまでに彼女はお姉さんに電話をしていた。電話で聞き終わった頃に持った携帯ごと奈美は鹿能の傍へ傾けた。     
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