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「まあええがなあ今日は大会社の会長はんが亡くなってなぁ内が入ってる白川ホールで葬式しゃはんにゃ、朝から急に五万円の献花ばっかりか十万円の注文も入ってってな普及版の三万がひとつもない嬉しい悲鳴をあげてんにゃ」
よく見れば事務方の明美まで花を切り揃えていた。
「鹿能さん今日休んだらとっちめなあかんなぁって云うてたとこやぁ」
明美は余分な葉を落としながら言った。
「そやでこんな日に休んだら役立たずってどやされるで」
白井と三山は注文を受けた献花を軽トラに積み込んでいる。
「白井さんそれ今朝作ったんか」
「白井はんは内の古株や昨日の深夜にはもう危ないっちゅう話を聞きつけよったんや、なあ大したもんやで」
社長は白井の肩を気持ち良く叩いていた。
「立花はん、わしはいろは商事の外商の利根さんとは日頃から懇意にしててなぁ日付が変わる頃に電話くれたんやいろは商事の会長はん死なはったでて言ってはった」
鹿能は社長と白井の会話を聞き流していたが、その商事会社の会長の死と今日の仕事の忙しさが、どう繋がってるのか妙に気になった。
「白井さん、いろは商事ってどんな会社なん?」
「今時の若い者んは知らんやろうなあ商事会社云うたら大量の品もんを扱う仕事やさかいわいら庶民には馴染みがないわなぁ」
「鹿能、喋るのはええけど献花作りの手を止めるなよ」
社長は喋りながらも寸分狂わず丁度良い段差に花を揃えている。
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