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「なぁ、僕が父さんでイヤだと思ったことはないか?おまえは幸せか?」
「幸せだよ!幸せに決まってる!父さんが父さんだから世界一幸せだ!」
つい苦笑が漏れる。
「昔な、母さんにプロポーズ受けたとき、僕が父親になったら、その子は世界一幸せになれるって言ったんだよな。おまえにその訳が分かるか?」
「当たり前だ!ハンディなんか気にしなくて、前しか向かなくて、誰にだって優しくて、悪いことは許さない!そんなのマンガの中のヒーローぐらいだ!父さんはヒーローなんだよ!」
「誉めすぎじゃないか?お前の気持ち、よく分かった。だが喧嘩はやめろ。お前のヒーローを困らすなよ」
分かったと浴室に息子の声が響いた。
僕がヒーローなんて柄でもない。
「父さんの背中は世界で一番広いから!」
まだ誉めてくる息子の声が響く。
もし、小人症だったから、こんな息子にめぐまれたのなら、それは感謝しかない。
そう空を仰ぐと天井から滴が顔に落ちてきた。
了
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