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「コーヒーを一つ。それと、君はフラペチーノでいいかな」
「コーヒーを二つで」
二人の前にコーヒーが置かれるまでの沈黙は、すごく長く感じた。
コーヒーを届けたウェイターを見届けてから、彼女が口を開いた。
「息子の夢を覚えている? 」
覚えている。宇宙飛行士だ。
「どうして宇宙飛行士を目指すようになったのかしらね」
それも覚えている。私が読んであげだ絵本がきっかけだった。
たしかあれは幼い少年が、亡くなったお父さんが恋しくて、お父さんのいる星に渡る舟に乗って、会いに行くという話だ。少年は渡る道中でいろいろな星を見て、その星に住む人と会う。彼らは全員亡くなった者で、昔飼っていた犬のペロに会うシーンもあった。
絵本を読んで以来、自分の目で星を見たいとよく言っていた。そのために宇宙の星を渡るパイロットになりたいと。
「あの子はいつも言っていたわ。いつかお父さんに会うために、星に渡る舟に乗るんだって。」
あの子の中では、あなた、死んだことになっているのかもね。彼女はいたずらっぽく笑った。
「私に会うのなら、2000ドルの中古車で十分だと伝えておけばよかったな」
喫茶店の窓から、すっかり暗くなった空を見上げた。
夢をかなえた私たちの息子は、今、星に渡る舟に乗っている。
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