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十数年も前に離婚した彼女から連絡があったのは、昨日の夜遅い時間だった。
「最後に、私たちの息子を会ってほしい」
電話から聞こえる彼女の声は震えていた。
もうこれっきりかもしれない、とそう思った私は、きっと会わせてくれと答えた。
今思うと、電話の向こうの彼女は泣いていたのかもしれない。ほっとしていたのかもしれない。
それだけだから、と言う彼女の言葉を最後に、通話は途絶えた。
ゆっくりと電話を置いた私は、しばらくぼーっとしていた。
時計の長針が二周くらいした。
私は明日の事を考えた。
もうずっと会ってなかった息子に会うのだが、どうしたらいいのか分からない。
息子は私を覚えているのだろうか。
息子の目に、私は父親として映ることが出来るだろうか。
息子との思い出は、息子が五歳の時までで止まっている。
息子好きだったパスタ、好きだったキャラクター。
きっと今はもう変わってしまっているだろう。
夢だけはきっと、変わらないままだったのかなとか考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
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