星に渡る舟

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 目が覚めた時には、もう約束の時間を過ぎていた。  彼女から一度だけ着信があったが、寝ていた私は気がつかなかった。  掛け直すと、もう遅いよと彼女は言った。  「とにかく行くから待っていてくれ」  そう言って彼女の返事も待たず、私は車のキーだけをポケットに入れて、家を飛び出した。  彼女との待ち合わせはいつもこうだった。  いつも私が待たせた。  いつも遅いよと言わせた。  急に中止した時もあった。  当時の私は愚かだったんだと今更に思う。  今も愚かなままだ。  ただ、愚かな私を彼女は愛した。側にいてあげると言ってくれた。  その言葉に甘えていた私は、彼女が側にいてくれる心地よさに酔っていた。  本当は彼女のほうが、私を必要としていたのだということに、気づけなかった。  仕事が波に乗り始め、大規模なプロジェクトチームのリーダーを任されるようになってから、私は家にいる時間より、オフィスで過ごす時間のほうが増えた。  私の仕事の都合で見知らぬ土地にやってきた彼女にとって、頼れるのは私だけだったと思う。  そんな彼女に息子を任せて、私は仕事にのめりこんだ。
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