星に渡る舟

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 フリーウェイに入り車を飛ばしていると、前方で車が詰まっていることに気づいた。  何かあったらしい。  こんなところで足止めを食らっている場合ではないのにと、焦る気持ちを鎮めようと、カーステレオの電源を入れた。大音量でクリスマスソングが流れ、もうそんな時期かと気づかされる。  彼女の右手の薬指に、エンゲージリングをはめたのは、クリスマス前の寒い夜だった。レストランの予約時間を一時間も間違えて、雪の降る公園で肩を寄せ合って待っていたのを覚えている。  彼女には情けないところをいくつも見せてしまった。  婚約してから初めて迎えた一月一日は、せっかくの休日だから遊びにでも行こうと約束していた。私は婚約を果たし、浮かれていたのだろう。大みそかのカウントダウンパーティーで飲みすぎてしまい、二日酔いの状態で彼女を車に乗せ、ドライブに出掛けた。  無理しないでいいよという彼女を制し、ファストフード店のドライブスルーに入ったところで看板にぶつかって、休日が台無しになった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加