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イルカ
「遅刻だぞ」村山が高そうな腕時計に指を指しながらいう。
「ごめんって電車が混んでてさ」僕は適当な言い訳をするが、電車が混んでるのと遅刻したのは全く関係が無いだろと村山がボソボソ言っているのを聞いて確かにその通りだと妙に納得した。
「たぶんここで間違いないな」村山がスマホに映る踏切のシーン周囲の景色を照らし合わせながらいった。
僕たちは、同一の人物がアップしたと思われるあの自殺動画の撮影スポットに来ていた。村山はカシャカシャとあたりをスマホで撮影している。
「でもなんで最初にここなんだ?大久保の親に直接聞けば何か分かるかもしれないだろ?」
「大久保の親が悪いやつだったらどうするんだよ。おれたちあなたのこと捜査してますってわざわざ伝えるのか?」
「なるほど」確かにそのとおりだと、自分の思考の浅さを反省した。
「こんな感じかな?」村山が腰を低くしてスマホを構えている。
「何やってんだ?」
「いや、こんな感じのアングルだったなと思って。動画。犯人と同じ視点に立たなきゃ何も見えてこないだろ」村山がもっともらしい顔でいう。
「たしかに」
「佐藤、お前ちょっとあそこに立ってみろよ」
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