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「もう。喧嘩しないで。今日はお墓参りに来たんでしょ?」本田萠がいった。
村山は「はいはい」と言いながら大久保の墓に向かって手を合わせて目を瞑った。萠が村山をみて「もう」と口を尖らせるのを僕は横目でみた。
墓参りを終えると珍しく村山から少しお茶でもしようといい出した。
萠が楽しそうな顔で「いいね」というのを聞いてから僕も「いいね」といった。
近くのファミレスに向かって歩いている途中で
「で、佐藤。お前は今何してんだよ」と村山がいった。
「何って?」
「仕事だよ。小説家になるとかいって就活を途中で投げ出しただろ?」
「なるよ。小説家に」村山の言い方に少しいらついてそっけなく返した。
「なるよってお前、なれるのかよ」
そんな村山の問いかけに僕は答えなかった。数十秒の沈黙の後、
「おれが一番やりたいことがこれだったんだよ」と僕は地面を動く自分の靴を見ながらいった。
「いつまでも子供みたいなこと言ってんだな」村山が呆れた表情でいったのを聞いて、また僕は少しいらついた。
「私は応援してるよ。けんちゃんの作文いつも面白かったもん」萠が笑っていうので僕は少し救われた気持ちになった。
「作文って。お前らが小学生の頃の話だろ?いったいいつの話してんだよ」
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