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「このままでは駄目だ。一旦、二手に分かれよう!」
紙魚に追いつかれる寸前、クロは紗弓の手を放した。
とっさに紗弓はクロへ手を伸ばす。
だが、高波が二人の間を引き裂き、二人は別の方向へ流されていった。
「待って、クロ。一人にしないで!」
「落ち着くんだ、紗弓。とにかく、近くの文字に飛び込め!」
錯乱状態の中、クロの声だけははっきりと聞こえた。
紗弓は震える手足に力を入れ、飛び上がる。
飛び魚のように跳ねた体で、上も下も分からないまま必死で文字を探した。
そして、近くに見えた文字列へ一心不乱に飛び込む。
「駄目だ、そっちは……」
文字に潜ったとたんに聞こえたのは、クロの上ずった声だった。
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