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紗弓の姿を捕らえた紙魚が黒い口を大きく開けた。
インクが紙魚の口に吸い込まれていき、流れが急になる。
覚悟を決めるしかない。
息を大きく吸い込んで巨大な魚を待ち構える。
眼前まで紙魚が迫った瞬間、紗弓は飛び上がった。
黒いインクの飛沫をあげながら紙魚を飛び越える。
腕をまっすぐ頭上で伸ばし、まっすぐ海に飛び込んだ。
そのまま紗弓の体は沈んでいった。
暗闇の世界に不安がこみあげる。
ぎゅっと目を閉じたまま潜り続けていると、誰かに手を掴まれた。
きっとクロだ。
力強く握られた手は「最後まで付き合う」そう言っているようだった。
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