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屋根に雨が当たる音がする。
トタン屋根に当たるようなカラカラと軽い雨音だ。
どうやら屋外らしく、車や風の音の混じる喧騒が近い。
紗弓は文字の海を少しだけ泳いだ。
頭に流れ込んできたのは日本語だ。
(帰ってきた)
家に近づいたことへの喜びと脱力感にどっと襲われる。
紗弓が文字の海に浮かんでいると、頭上から声がした。
「……そんなもの使わないで、素直にネットで調べればいいじゃん」
「お前はだから駄目なんだよ。いいか、こうやって、ページをめくって調べることに意義があるんだよ。時刻を追うだけで、電車に乗ってる気になれるだろうが」
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