0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
ふたりはともだち
「男女間の友情ってあるのかな」
彼はテレビを見たままわたしに声をかけてきた。
「なに? 藪から棒に」
だからわたしもテレビから目を離さずに聞いた。
テレビでは少し前まで放送していたドラマが流れている。よくある男女の恋愛ドラマ。主人公の男性はいま売り出し中の若手俳優で、ヒロインの女性もやはり、ファッション雑誌やドラマで活躍している人だ。いまは男性が女性との距離を少しずつ縮めようとアタックしていた。女性の演技がすごく好きだ。指先まで色気があって、それでいて笑顔はあどえない。男性とおなじ目線になって、ドキドキと彼女の一挙手一投足に振り回される。早くくっついちゃえばいいのに。もどかしい。
「じゃあ、男同士、女同士の恋愛関係の成立はあるか」
隣の彼はそうでもないのか、わたしへの言葉は続く。男同士、女同士の恋愛か。
「あるでしょ。わたしの身近にもいるよ」
知り合いを何人か思い起こす。ひい、ふう、みい、よお。結構いると思う。
「・・・・・・だよなあ。俺の知り合いにもいた。ふつーに」
「そう、普通ふつう」
「うん」
彼はコーラを飲む。
「それなら、男女の恋愛は?」
「それこそいっぱいいるでしょ。そこらじゅうに」
最近大学の先輩と後輩が結婚した。式は再来月だったような気がする。同性同士の恋愛よりもはるかに多い、と思う。
「男同士の友情は?」
「あるねえ」
「女同士の友情」
「あるある」
男女の恋愛よりさらに多いのではないだろうか。
「なら、男女間の友情」
最初の質問に戻ってきた。彼は、これがいまいちばん気になることらしい。
男女間の友情。それは恋愛に発展しないということだ。いま見ているドラマの二人とは違い、ずっと友人関係でありつづける。
最初のコメントを投稿しよう!