ノゾキ見

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 空メールを送信すると、ほんの数秒で返信があった。  その返信メッセージには、4桁の数字―――  どういうプログラムなのか、当然のように僕に分かるはずがない。Zさんの入手経路も定かではない。でも、そんなことはどうでも良い。  シークレット記事をクリックすると、「パスワードを入力して下さい」と表示され、僕は入手した4桁のパスワードを入力する。  次の瞬間、「よしっ」と小さくガッツポーズする。  閲覧できるようになったシークレット記事を、僕は食い入るように読み始める。  こんな盗み見など、端から見れば悪趣味で、無意味なことに思えるだろう。というか、完全に犯罪行為だ。だけど、罪悪感などない。僕にとって、これほど胸踊る出来事は久し振りなのだ。  僕は母が誰よりも好きだった。母の喜ぶ顔が見たくて、遊ぶことも我慢して勉強した。そして、県内トップである私立若宮小学校にも合格した。  母の喜ぶ顔が僕の全てだった。それが僕の喜びだった。  でも、それが、あんな悲劇を招くなんて。  その頃の僕には、想像さえできなかった。  だから、僕は全てを手放した。  それ以外に、あの時の僕には何もできなかった。いや、今の僕にも・・・  その後、若宮中学校への進級試験に落ち、近所の公立中学校に進学した。ランクを落とした高校受験にも失敗し、滑り止めの第二中央学園高校に入学。唯一の家族である父に見放された僕は、生活費だけを手渡されて、ずっと放置されている。  でも、仕方ない。  許されないんだ。  僕は何も求めてはいけない。  夢も希望も、そして人並みの幸せも・・・  シークレット記事は、予想通りに友人や知人に宛てた日常生活を綴ったものだった。大学生活、私生活での出来事や写真、声だけではない生身の瀬戸 麻美がそこにはいた。  誰も知り得ない情報が目の前に広がり、僕は全てのファンに対して優越感を覚えた。
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