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「聖ヨハネスク女子大・・・」
在学している大学名を見て、一瞬怯む。聖ヨハネスク女子大学は、県内のみならず全国的に偏差値が高い大学として有名だからだ。
写真は友人数名と写っているものばかりだが、重複している人物を確認していくことで、本人がどの人物であるかは簡単に特定できた。
声のイメージからは大人びた人物像を想像していたが、現実はかなり異なっていた。髪型はショートボブ。日焼けした顔は、むしろ子どもっぽい印象を受ける。大半の写真がTシャツにジーンズという格好。可愛らしいスカート姿などはまったく存在せず、基本的にボーイッシュな服装だ。
このビジュアルであれば、いまどきのアイドルと比較しても見劣りしないのに、なぜ素性を隠しているのだろうか。テレビや雑誌から、引く手あまただと思う。
まあ、ひとそれぞれ、色んな事情があるのだろう。
最初の記事までさかのぼって読んでいると、いつの間にか23時を回っていた。僕はシャワーを浴びるために、パソコンをそのままにして1階に下りる。
帰宅した時に点けたダイニングの灯りが廊下に漏れてはいるものの、まったく人の気配は無い。
父の帰宅時間は、いつも午前になってからだ。たまに、朝少し顔を合わせるだけで、言葉を交わすこともない。
関東電力システム管理部長。今の仕事は、電線を利用した光高速通信の設置と低消費電力無線通信施術の開発らしい。これは本人が言ったわけではなく、僕が関東電力のホームページから得た情報だ。
あの日から、加速度的に家族はバラバラに崩壊した。いくら後悔しても、あの日々が僕に戻ることはない。僕はもう二度と、大切な物を失いたくない。そのためには、僕は沈黙を続けている。これまでも、これからもずっと。
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