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俺が戻ると彼女は少し膨れっ面になっていた。
多分せっかく寒さに耐えたのに列車が遅れるなんてとか思ってるんだろう。
そんな彼女に俺は熱々のコーヒーを手渡そうとする。
「微糖とブラック買ったけど、どっちがいい?」
「あ・・・ありがとうございます。微糖でいいですか?」
微糖を手に取った瞬間彼女はあまりの熱さに缶を軽く宙に浮かせてしまった。そんな可愛らしい光景を眺めながら俺は缶を開けて飲む。
少女がしばらくして安定して掴めるようになると、早く飲みたいと言わんばかりに素早く缶の蓋を開けた。
「こんなこと言うのもあれなんですけど、この路線が廃止になるって知ったの最近なんです」
「そうなんか」
「行った事無い所行ってみたいなーなんかないかなーって探してここにしようと決めて、よし出かけるぞーってなって詳しく調べてみたら」
「なるほど、ハハハ」
コーヒーの影響もあるだろうか、俺の笑い声と同調するかの様に白い煙は段々大きくなっていく。
身体が段々温まってきた。やはり温かい飲み物のはいいもんだ、お互いそう実感していると何やら汽笛が聞こえてきた。
位置からしてかなり遠くからだ、確実に間に合う。
少女はカメラをセットする。そしてまだかまだかと言わんばかりに興奮し始めた。
「絵になりますよね」
彼女は緊張からかこっちを向き妙な独り言を吐いた。
それに対し俺も彼女の顔を見て独り言を吐く。
「絶対なるよ、ここに来るのは久しぶりだけど俺はそう思う」
俺が世話になってた頃から走ってきた古きディーゼルが目の前に現れると、彼女はシャッターを押した。
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