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ウトサワーの腕は確かだった。
怪獣を狙うために山の中に設置されたミサイルや大砲、レーザーが火を吹いた。
四方から波のように迫る攻撃。
それさえ、かいくぐっている。
そして、アテリーシン号の艦橋の後に飛び込み、帰還した。
推進力を生むハイパードライブエンジンが、ごう音と光、辺りを揺るがす振動をまき散らして、宇宙巡洋艦を突き動かす。
眠ったままの戦友200人もろとも。
すべての兵器、地球人には未知のエネルギーを、色とりどりの軌道として雨あられと降り注ぐ。
PP社の空への攻撃、来援した航空自衛隊の戦闘機からの攻撃も迎撃された。
そこでもボルケーナは、問題なく突き進む。
白い翼と赤い尾が肥大化し、攻撃を一身に浴びながらも船体を締め上げる。
攻撃が当たった端から、自身のエネルギーに変換しているのだ。
にもかかわらず、地上が突風で吹き荒れる事はなかった。
その後は、兵器をカギヅメでえぐりだす。
戦いは終わった。
地球とルフルムの交流が始まり、送られたデータを元にアテリーシン号の修理が始まる。
乗組員は帰還を許された。
そもそも、帰還を許さなかったのは、軍部だけだった。
国民感情としては、遠い宇宙で自国民が戦後の平和も知らず、眠るだけなのを許せなかった。
ウトサワーの罪は、ルフルムの判断に任される。
今は、修理された人工冬眠機の中だ。
政治的には勝利と言っていい、めでたい事だと、久保田少年は思った。
だが、もっとうまく立ちまえれば、ウトサワーの無謀な戦いを止められたのではないか?
それができなかった自分が、情けなく思えた。
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