これも一種の両想い?

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 情けない。  本当に情けない。  夕べからずっと頭の中に、あの光景が浮かび続けている。  本気で精神衛生上よろしくない。  俺は重い足取りで、それでもゆっくりと病院へと向かった。  病院の受付へ行くと、看護師さんが「あら、今日は早いのね」と驚いた顔をして俺を見た。  俺は困った顔で曖昧に頷く。 「いつもだったら、部活終わってから来るのに。何? 今日は休みだったの?」 「ええ、まあ、そんなところです」  俺は言葉を濁して誤魔化した。 「そうなんだ。あら、じゃあ椙田君もそろそろ来る頃かしら?」 「………え?」 「部活終わってからって言ってたんだけど、早めに来るかもしれないわね。休みになったのなら」  そういえば試合で傷めた腕の治療のため、この間から椙田もこの病院に通院してるんだった。時間を合わせて一緒に来たりしたこともあったっけ。  俺は思わず受付の壁に掛かっている時計を見あげた。
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