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定時で練習を終えたとしたら、あと三〇分ほどだろうか。いや、もしかしたら、もうすでに近くまで来ているかもしれない。
「もう……大丈夫よ。この間の検査結果を聞きにくるだけだから。心配しなくても腕の怪我は順調に治ってるって」
俺はそうとう心配そうな顔をしていたのか、看護師さんが安心させるように微笑んでくれた。
「あ……そう……ですか」
僅かに声が震える。それを安心した吐息だと勘違いしたのか、看護師さんはくすりと笑って立ち上がった。
「じゃあちょっと待っててね。妹さんの分、処方するから」
「あ、はい」
薬剤師さんが準備をしている間、俺はロビーの椅子に座って待っていた。やけに時計の音が大きく聞こえ、それに合わせて椙田の足音が近づいてきているような気がした。
「お待たせ、瀬谷君」
先程の看護師さんが受付から俺を呼んだ。
「じゃあ、これが一週間分ね。はい」
「あ、有り難うございます」
「ホント、いつもいつも偉いお兄さんよね。君は」
「そんなこと……」
「あら、謙遜。この間、椙田君も言ってたわよ。瀬谷君はすごいって」
「…………!」
椙田の名前に心臓が反応する。とたんに頬が熱くなる。
「あら、噂をすればなんとやら。椙田君が来たわよ」
「……!?」
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