12人が本棚に入れています
本棚に追加
「……え……と……真田から聞いてない?」
少しだけ誤魔化してみる。無駄だとは思うけど。
案の定、椙田は呆れたようにため息をついた。
「妹さんの薬を取りに行くっていうのは聞いたけど、それは本当の理由じゃないよね」
「そ…んな」
「…………」
椙田は俺の方を真っ直ぐに見ている。俺は決まり悪くて視線をそらす。もうこの時点で負けを認めたようなものじゃないか。
ダメダメだ。俺って奴は。
「瀬谷」
「はい」
「昨日の……」
ドクンっと心臓が飛び跳ねる。
「見た……よね」
「…………」
俺はギュッと目をつぶった。とたんに昨日の部室での光景が頭の中に蘇る。
やばい。
慌てて俺は目を開いた。まだ現実の地面でも見ていたほうがマシだ。
最初のコメントを投稿しよう!