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「……きゃっ……」
小さな悲鳴が洩れ、重なっていた二人の影が慌てたように距離を取って開いた。
「……あ……」
沈みかけた夕陽に照らされた二人を見て俺は硬直する。
対する相手も、驚いた表情で俺を見返す。
「……す……すいません」
思わず謝って俺はバタンッと勢いよくドアを閉めると、一目散に駆けだした。
資料室とは反対方向へ。
そして、俺は走った。何だかよくわからないまま走った。
走って走って走った。
頭の中が真っ白になって、心臓がバクバク言った。
走ってる所為でバクバク言ってるのか、さっき見た光景に心臓が驚いてるのか、自分でもよくわからなかったけど、とにかく走った。
廊下を抜け、下駄箱を通りすぎ、校門をくぐり、走り続けた。
走って走って走って。
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