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彼女が指をはじくと、本棚は独りでに動いた。
その奥から物々しい金属製の扉が姿を見せ、よく見ると見慣れない文字がびっしりと刻み込まれている。
巫女は手をかざすと、耳慣れない言葉を口にした。
「テン・カツキュ…ウ…」
ドアは鈍く軋みながら開いた。その先には宮殿が広がっているが、どこか妙だ。
「行くわよ」
僕は巫女の後に続いて、扉をくぐった。
巫女の部屋は地と水のオーラで満ちているが、その扉を境に火と風のオーラが一気に強くなる。
何というか、妙な気持ちだ。
「よく来たね。命の巫女殿」
目の前には仮面をつけた女性が立っていた。
とんがり帽子にゆったりとしたローブと外套を纏う、いかにもな格好だ。
歳はわからない、が、その声から6・70歳の印象を受ける。
巫女も気楽な様子で返事をした。
「お久しぶりです、導師さま」
「そんな大それたものではない…魔女で十分じゃよ」
炎の導師。南東を守護する文字通りの魔導師だ。
命の巫女は南西なので距離は2つ。相性は普通といったところか。
彼女は僕に視線を向けた。
「ところでお主…脱走を企てておったじゃろう」
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