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「おやおや…これではどちらが"悪魔"かわかりませんね」
その女性の歳はわからなかった。
しかし、一歩足を踏み入れられただけで空気が淀む。
聖女と巫女が気を落ち着けると、その女性は巫女の対面席に腰かけた。
女性は薄ら笑いを浮かべながら言う。
「巫女殿、ずいぶん美しい獣をお持ちだな。
まるで月夜に立つ…」
巫女が睨みつけると、その女性は黙ったが更なる笑みを浮かべた。
すると、入り口から声が響いた。
「黄泉の番人殿…少々おしゃべりが過ぎるのではないか?」
まるで気配を感じない。この白と黒の翼をもつ女性は本当にそこにいるのだろうか。
彼女は聖女や巫女の前に立つと、スカートの裾を上げて一礼した。
「ご無沙汰しております、お二方…」
聖女の額に青筋が走ったように感じた。
巫女は祈るように手を合わせて返礼し、聖女も十字をきった。
白と黒の翼の女性は髪をいじると、聖女の対面席に腰かけた。
方角は東…西の聖女にとって最悪の相性の相手だ。
こうなると空気が痛い。
そう思った時、廊下からドシンドシンと物音が響いて来る。
全員がほっとしたのだろう。会議室を包む空気が少しだけ和んだ。
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