リュシアンとババ様

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「よく知ってるねリュシアン…」 『実物なら何度も見たことがあるからな。 で…私の毛で実験してみたかったわけか』 そう尋ねると、錬金術師は笑いながら言った。 「というか…もう試してて…」 『なに…?』 僕が歩みを止めて睨むと、彼女は「ひぃ、ごめんなさい…こめんなさい!」と声を上げた。 「アンタの毛って40時間くらい持つから重宝するの。 不思議だよね。ただのお馬さんだと、すぐに消えちゃうのに…」 なるほど。だが長持ちするからと、いくつも抜かれたらたまらない。 『竹という植物を試してみろ。いい結果が出るはずだ』 錬金術師は黙り込んだ。 その表情はわからないが、雰囲気からもの欲しそうな顔をしていることは容易に想像がつく。 「竹か…その考えはなかったよ!」 『だから、僕の毛を抜いたり触ったりするなよ』 「ええっ…そんな、もう少しちょうだいよ!?」 『こ と わ る』 全く、油断も隙も無い。
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