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巫女の家にはミノタウロスが滞在していた。
彼女は椅子に腰かけて本を読んでいるが、その脇には松葉杖を置いている。
もはやこれなしでは、歩けなくなっていたのだ。
「おお、わざわざすまない」
錬金術師はミノタウロスをじっと眺めた。
「…また、大きくなったね」
「はっはっはっは…貰えるモノは何でも貰う主義だが、いささか度が過ぎたらしい」
「…世の中って不公平よね」
そういえば錬金術師とミノタウロスの相性は、あまりよくなかったな。
やがて、錬金術師はミノタウロスに寝るように指図した。
彼女は手をかざしてミノタウロスの身体の内部を調べた。
「やっぱり、体の成長に臓器や骨の成長が追い付いてない」
ミノタウロスは「そうか…」と頷いた。
「あと、どれくらい持ちそうだ?」
「わからないけど、起き上がれなくなったらまずいよ。
身体が重力を感じなくなったら、今まで以上に伸びてしまう」
「むう…そうなったら、寝たきりになってしまうな」
錬金術師は薬を出すと言った。
「あまり力になれなくてごめんなさいね」
「いいや、相談に乗ってくれただけでも気が楽になる。
とにかく、あがくだけあがいてやるだけだ」
ミノタウロスは歯を出してニッと笑った。
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